1. Python：医療AI開発の主力言語

Pythonは、その汎用性と豊富なライブラリエコシステムにより、医療AI開発において最も広く利用されている言語の一つです。特にデータサイエンス分野では、その優位性が顕著です。

Kaggleが実施した「2022 Machine Learning & Data Science Survey」によると、データサイエンスの専門家の約90%がPythonを日常的に使用していると報告されています[1]。これは、提供された下書きの「83%」という数値よりも高い実態を示しています。Python Package Index (PyPI) のダウンロード統計を見ても、主要なデータサイエンスライブラリであるscikit-learn、pandas、NumPyは、過去1ヶ月間でそれぞれ1億3,221万回以上、4億2,713万回以上、5億1,954万回以上ダウンロードされており、その利用の活発さが伺えます[2-4]。

医療分野での強み：

機械学習: scikit-learn, TensorFlow, PyTorchなどの主要ライブラリが、診断支援、画像解析、予後予測などに活用されています。
データ処理: pandas, NumPyを用いることで、臨床データや医療画像データ（DICOMなど）を効率的に処理・分析できます。
医療特化: 医療画像AIのためのMONAIや、生存分析のためのlifelinesなど、医療分野に特化した専門ライブラリも充実しています。
コミュニティ: GitHubの医療AI関連リポジトリの多くがPythonで実装されており、活発なコミュニティサポートと豊富な学習リソースが存在します。

実際の利用例として、Google ColabやJupyter Notebookでのデータ分析・モデル開発が一般的であり、迅速なプロトタイピングと共同作業を可能にしています。

2. R：統計解析の伝統的な強者

Rは、統計解析とデータ可視化に特化した言語として、特に学術研究や疫学分野で長らく利用されてきました。

Kaggleの「2022 Machine Learning & Data Science Survey」では、データサイエンスの専門家のうちRを使用しているのは約10%と報告されております。[1]

機械学習がメインであるKaggleでは仕様割合が低いRですが、Rの利用が特定の統計解析や学術研究などの分野に集中していることを示唆している可能性があります。CRAN（Comprehensive R Archive Network）には5万以上の統計解析パッケージが登録されており、その専門性の高さがRの強みです。

医療分野での強み：

統計解析: survivalパッケージによる生存分析、epiRによる疫学研究、clinfunによる臨床試験データ解析など、高度な統計手法が利用可能です。
再現性: R Markdownを使用することで、分析コード、結果、レポートを統合し、研究の再現性と透明性を高めることができます。
論文執筆: 査読付き医学論文において統計解析の標準ツールとして広く認識されており、その結果の信頼性が評価されています。
コミュニティ: Bioconductorプロジェクトを中心に、バイオインフォマティクス分野での強力なコミュニティと専門パッケージが提供されています。

統計解析を伴う医療研究の多くでRが使用されており、学術的な利用におけるRの重要性を裏付けています。

3. 医療分野での言語選択：データに基づく推奨

医療AI開発におけるプログラミング言語の選択は、プロジェクトの目的と要件によって異なります。

言語主要な用途医療分野での強み推奨されるシナリオ

Python:

データサイエンス、AI開発、機械学習豊富なライブラリ、活発なコミュニティ、汎用性AIモデル開発、データ分析、迅速なプロトタイピング

R：

統計解析、データ可視化、学術研究高度な統計機能、再現性、学術的信頼性統計解析、疫学研究、臨床試験データ解析、論文執筆

4. 注意事項とデータソース

データソース:

[1] Kaggle. (2022). 2022 Machine Learning & Data Science Survey. https://www.kaggle.com/competitions/kaggle-survey-2022
[2] PyPI Stats. (2025). scikit-learn download statistics. https://pypistats.org/packages/scikit-learn
[3] PyPI Stats. (2025). pandas download statistics. https://pypistats.org/packages/pandas
[4] PyPI Stats. (2025). numpy download statistics. https://pypistats.org/packages/numpy
[5] Stack Overflow. (2023). Stack Overflow Developer Survey 2023. https://survey.stackoverflow.co/2023