はじめに

電子カルテ、医療機器、ウェアラブルデバイスなど、私たちの周りには日々膨大なデータが生まれています。これらのデータを活用し、より良い医療を提供しようという動きが世界中で加速しています。その中心的な役割を担っているのが、プログラミング言語「Python」です。

「プログラミング」と聞くと、専門外で難しそうだと感じるかもしれません。しかし、Pythonはシンプルで読みやすい文法が特徴で、プログラミング初学者に最も推奨される言語の一つです。本連載では、プログラミング経験のない医療者の皆様が、Pythonの基礎を無理なく、そして実践的に学べるよう、全20回にわたってナビゲートします。

なぜPythonが医療分野で選ばれるのか？

数あるプログラミング言語の中で、なぜPythonが特に医療・ヘルスケア分野で注目されているのでしょうか。その理由は、Pythonが持つ「豊富な専門ライブラリ」と「強力なコミュニティ」にあります。データ分析、統計処理、AI開発など、医療データ活用に必要な専門的なツール（ライブラリ）が世界中の開発者によって提供されており、それらを組み合わせることで、複雑な処理も比較的容易に実装できるのです。

医療者がプログラミングを学ぶ3つのメリット

多忙な業務の合間に新しいスキルを学ぶのは大変なことです。しかし、それを乗り越えるだけの明確なメリットが、プログラミングにはあります。

医療者がプログラミングを学ぶ3つのメリット：

業務の自動化と効率化: 日々の定型業務（データ入力、レポート作成、情報収集など）を自動化する小さなツールを自作できます。これにより、作業時間を短縮し、より専門的な業務に集中できます。
データリテラシーの向上: データを「読む」だけでなく、「処理・分析する」スキルが身につきます。これにより、臨床研究や業務改善のためのデータに基づいた客観的な考察が可能になります。
新技術への深い理解: AIを活用した診断支援システムなど、新しい技術がどのように機能しているのかを原理から理解できます。これにより、技術を正しく評価し、現場に導入する際の判断力が養われます。

本連載で学べること

本連載は、プログラミングの知識がゼロの方を対象に、Pythonの基礎を少しずつ学んでいくことを目指します。最終的には、ご自身で簡単なデータ処理や計算ができるようになることを目標とします。

次回は、早速Pythonに触れていきます。PCへのソフトのインストールなどは一切不要です。Webブラウザだけで始められる、便利な学習環境をご紹介します。