「外来が終わってからが本番」？

外来が終わり、病棟に戻ってから診療録の追記や退院サマリに追われる…。研修医もベテランも、パソコンの前で深夜まで記録を書き続ける光景は珍しくありません。

診療記録は医療の根幹ですが、同時に医師の大きな負担でもあります。そんな「記録地獄」に変化をもたらしているのが、生成AIです。

東北大学病院の挑戦 – 47％の短縮

2024年、東北大学病院はNECと共同で生成AIによる診療記録自動要約システムを導入。電子カルテの経過記録をAIが読み込み、紹介状や退院サマリを自動で下書き生成する仕組みです。

実証試験では記録作成時間を平均47％削減することに成功。医師からは「文書作成が格段に楽になった」「長い経過を要点で把握できる」と高評価を得ました。これは単なる“効率化”ではなく、医師が患者と向き合う時間を取り戻す一歩となりました。

藤田医科大学病院
　退院サマリ作成支援AIを導入。わずか数秒でカルテから要約を作成し、導入後3か月で累計約1000時間の業務削減を実現しました。（藤田医科大学病院ニュース, 2025）。
川崎幸病院
　ChatGPTを活用したサマリ作成システムを開発。従来1件1時間以上かかっていた作業を約5分に短縮。もちろん人間が最終確認する運用で質も担保しています。
慶應義塾大学病院
　入院経過が10万字を超える症例でも瞬時に要約。科ごとにカスタマイズ可能なプロンプトを組み込み、現場での実用性を追求しています。

Stanford Medicine
　「ChatEHR」というAIシステムでカルテに直接質問。「この患者の最新HbA1cは？」と入力すれば即答。さらに**診察会話を要約する“アンビエントAI”**では、96％の医師が「使いやすい」と回答し、78％がスピード向上を実感しました。

Mayo Clinic
　Google Cloudと連携し、院内データ検索に生成AIを活用。論文やカルテを横断検索し、情報収集時間を最大87％短縮した例もあります。

Northwell Health
　複雑な転院症例の経過をAIが要約し、重要情報を「一目で把握できる」仕組みを導入。医師の残業削減にもつながっています。

現在主に使われているのは退院サマリや紹介状ですが、適用範囲はさらに広がっています。

つまり、「文書を書く」ほぼ全ての場面にAIを応用できる時代が近づいています。

もちろんリスクもあります。

つまり「AIが下書き、人が仕上げる」運用が鉄則です。

研修医が夜中まで退院サマリを書いていた時代から、AIが下書きを数分で作る時代へ。
最初は戸惑うかもしれませんが、試してみると「患者のために使える時間が増える」ことを実感できるでしょう。

次回は「AI診断支援ツールの選び方と使い方」を取り上げます。Claude・ChatGPT・Geminiの違いを徹底比較し、医師が安心して導入できるポイントを解説します。

NECプレスリリース：東北大学病院とNEC、診療記録の生成AI自動要約で業務時間47％削減
https://jpn.nec.com/press/202309/20230921_01.html
藤田医科大学病院：退院サマリー生成AI導入（ニュースリリース）
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j94sdv0000005p7v.html
川崎幸病院：ChatGPTを用いた退院サマリー作成支援システム
https://www.kawasaki-saiseikai.jp/news/20230707
慶應義塾大学病院：AIによる退院サマリー作成支援プロジェクト
https://www.hosp.keio.ac.jp/pressrelease/2023/08/31
Stanford Medicine：「Ambient clinical documentation」実証研究
https://med.stanford.edu/news/all-news/2023/12/ambient-clinical-documentation.html
Mayo Clinic × Google Cloud: 生成AIによる医療データ検索導入
https://cloud.google.com/blog/topics/healthcare-life-sciences/mayo-clinic-google-cloud-generative-ai
Northwell Health: Clinical documentation efficiency initiatives
https://www.northwell.edu/news/insights/how-northwell-is-using-ai