外来あるある：「問診で押して、診察が遅れる」

「患者さんの話を聞くだけで時間が足りない…」
「カルテ入力と同時進行で聞き漏らしが出てしまう…」

外来診療で最初にぶつかる壁が、問診の時間と精度です。診察前に十分な情報が得られないと、その後の診療が非効率になり、結果として患者の待ち時間も延びてしまいます。

そこで今、全国の病院で広がりつつあるのが AI問診システム。
「Ubie」をはじめとするサービスは、患者がスマホやタブレットに症状を入力すると、AIが必要に応じて質問を掘り下げ、診療に必要な情報を自動整理して医師に提示してくれます。

3分短縮で見えた効果 ― 日本赤十字社の事例

宮城県・石巻赤十字病院では、救急外来にAI問診「Ubie」を導入しました。結果はシンプルかつ衝撃的。

たった数分の短縮ですが、外来全体で積み重なると年間数百時間の削減になります。その時間を患者対応やスタッフ教育に振り向けられるのは、現場にとって大きなインパクトです。

京都府・医仁会武田総合病院では、外来待ち時間の改善を目的にUbieを導入。検証の結果、初診の平均診察時間が30％短縮し、1日の診療全体で40分もの時短効果が得られました。

患者からの「待たされる不満の声」が減り、看護師が苦情対応に追われることも減少。外来の雰囲気が改善し、スタッフ満足度も上がるという二次的効果も報告されています。

大病院だけでなく、地域クリニックでも成果が出ています。
神奈川県の渡部クリニックでは、患者が来院前にスマホで症状を入力 → AIが診療用のカルテ案を生成する仕組みを導入。

その結果：

「待ち時間が短くなった」という実感は、患者満足度に直結することを示す好例です。

AI問診のメリットは大きく4つに整理できます。

もちろん課題もあります。

「AIが診断する」のではなく、「医師の判断を補助する」位置づけを忘れないことが重要です。

まずは小さな外来単位やクリニックで試すのが現実的です。数分の短縮でも、積み重なれば医師の余裕と患者の満足に大きく響きます。

そして「体感した効果」を持って院内導入を提案すれば、説得力も増します。

次回は「生成AIによる診療記録効率化」をテーマに、米国大学病院での記録時間47％削減事例を詳しく紹介します。